mkvie's blog

日々の殴り書き

CSR とスタートアップと GitHub

MBA で丁度 CSR (Corporate Social Responsibility, 企業の社会的責任)について学習しているので、以下はその覚書とかメモ:

(Porter, et al., 2006) によると、CSR を単に企業の広告やマーケットの一種として使うのは間違っていて、社会で求められていることと企業の活動がどのようにマッチングするのかを考え、マッチングの結果を強み (SWOT で言うところの S や O) として活かすべきだと私は理解した。例として TOYOTA のハイブリッド車 (環境への負荷を減らし、燃費も良くなる) や、Marriott というホテル業界の会社のインターン制度に対する出資 (結果として離職率が下がる)が挙げられていた。論文では Responsive CSR と Strategic CSR という2つの分類がなされていたのだが、上の例は両方とも後者に分類される。

実はこの他にも Microsoft の例が紹介されていた。米国の Community College (地域に根ざした2年制の大学) に、資金と社内から教員としてボランティアを派遣するというような事例が紹介されていたのだけれど、上にある2つの例ほど、それが収益に結びつくというエビデンス (もしくは尤もらしさ) は提示されていなかった。

論文を読みながら「うーん、ソフトウェアのスタートアップだとしたら、どういうことができるのだろうか?」とか考えていた。論文では

"Not every company can build its entire value proposition around socialissues as Whole Foods does, but adding social dimension to the value proposition offers a new frontier in competitive positioning".

とも書かれており、「結びつけることで新たな世界を見ることができるけれど、全ての企業がそんなことできるわけではないよ」というふうに (私には) 読めた。

それから少しして、数日前に読んだ GitHub CEO のした講演内容を思い出した。

"幸せに最適化するっていうのは別に自分の社員に素晴らしい労働環境を提供し、色々なものを買い与えればいいというわけじゃない。Githubに関わる全ての人、つまり株主や、たくさんのユーザー、同じIT業界にいる人、それぞれのバランスを取りながらみんなを一緒に幸せにしていかないといけない。その為には私たちの会社と他の世界をつなぐ「インターフェース」であるプロダクトをよりよいものにしていかないといけない"
"良いプロダクトを作るには良いカルチャーを作るところから始めなければいけないだろう。実は良いカルチャーがあれば、あくせく働かなくったって良いプロダクトはできる。なぜなら良いカルチャーは良いプロダクトが自然に生まれてくるフレームワークだからだ。殆どの社員には働く時間は決まっていないし、どこで働いてもいい。バケーションのリミットもない。必要な時に休んでリフレッシュしていい。どれだけの価値を出したかに責任を持つべきであって、どこで働いたかやどれだけ働いたかということは問題ではないんだ"

これって論文で述べられている CSR の考え方そのものなのでは無いだろうか?

論文を読みながら、「うーん、スタートアップするってことは、そこまで資金も無いだろうし、バリューチェーン的なものも対して無いだろうし、基本的に外界とのつながりってプロダクトが殆ど全てなのでは無いだろうか?」とか考えていたのだけれど、プロダクトを作り上げるのは社内の人間だし、従業員は勿論重要なステークホルダーだ。この講演では (日本語に訳されているけれど) 「ビジョン」という言葉が使われている。折しも論文の "Shared Value" という言葉がそれに当てはまると思う (ちなみに論文では、その説明に "a meaningful benefit for society that is also valuable to the business" という言葉が使われている)。その結果が、セールスのコミッションをなくすということであり、マネージャーをなくすということであり、

"単純に他の会社を真似するのではなく、こういう仕組みを作ることに我々は心血を注いでいる"

ということなのだろうと理解した。

論文を読みながら感じていた疑問に立ち返ろう。スタートアップは GitHub のようなマネージメント (という言葉が嫌いならば、「理念」) でやっていけるのだろうか? うーん、集まってくる人や、中で「心血を注いでいる」人に寄るのかなぁ…。

 

Porter, M. and Kramer, M. (2006) ‘Strategy and society: the link between competitive advantage and corporate social responsibility’, Harvard Business Review, vol. 84, no. 12, pp. 78–92

CEOが自ら語った「イノベーションを起こすためのGithubの哲学」